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【3年生】卒業式 校長式辞

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校庭の木々の芽もほころびはじめ、たしかな春の息吹を感じる今日の佳き日に、多数のご来賓の皆様のご臨席を賜り、ここに第55回卒業証書授与式を、盛大に挙行できますことは、大きな喜びであり、まことに感謝にたえないところであります。心から厚く御礼申し上げます。

さて、ただいま呼名された273名の卒業生の皆さん。誠実、友愛、勇気の校訓のもと、学習、学校行事、部活動、生徒会活動等に熱心に取り組み、3ヵ年の教育課程を無事修了されました。この3年間のさまざまな光景が、それぞれの心の中で、豊かな感情とともに蘇っていることと思います。今日のこの卒業式は、みなさん一人ひとりにとって、自分の将来への夢や希望に胸を膨らませ、自覚と決意を新たに、今後力強く、たくましく、それぞれの人生を歩むための大事なスタートとなります。今日は最後に、旅立ちを目の前にするみなさんに、私から言葉を贈りたいと思います。

これから先の未来を表す言葉に「共感性の時代」という表現があります。私たちの目の前には、絶えず変わり続け、予測不能な未来が待っています。AIの出現により、学び方や働き方は激変しています。世界情勢や世界経済は不安定を極めています。地球温暖化と自然災害は一向に歯止めが効きません。少子高齢化が急速に進行し、それに伴い、海外から国内に多くの人材が流入しています。このような変化が絶えず起こり続けています。これまでの閉鎖的な社会は終焉を迎えようとしています。人種、国籍、性別、文化といった、異なる価値観が入り乱れる、多様性の中で生きていくということを意味しています。皆が同じ、皆が一緒ということがあり得ない世界です。違うことが当たり前、それぞれが異なる価値観を持つのが当たり前な世界です。むしろその違いにこそ意味があり、違いをお互いに受け入れながら、新たな価値を作り出していくことになります。

これまではわかりやすかったのです。皆が同じという社会であれば、無理してまで変化する必要もなく、既存のルールに従っていれば、問題なく生きていくことができました。しかし、これからは、決められたルールに対し、周囲がそうしているから、これまでがそうだったからという理由で、何も疑わずに従うことは大きなリスクがあります。これだけ多様な価値観が溢れる社会の中では、これまでの当たり前は、これからの非常識となる可能性だって十分あるのです。

そのような多様性に溢れる世界を生きる上で、最も大切になるのが「共感する力」です。相手が何を感じているのかを感じ、理解する力であり、その相手に対して自分はどうありたいのか、どうなりたいのか、どうしたいのかを、自分軸で判断し、行動を決めていく力です。ルールだから自分の行動が決まるのではなく、自分軸で判断し意思決定したものが、自分の行動になるのです。どうしたら他者のために力になれるのか、どうしたら社会に対して役に立てるのか、どうしたら誰かの困りごとを解決できるようになるのかを、判断軸として持たなくてはなりません。自然と、自分の意識は社会に向かい、社会に対して当事者としての意識が芽生えていきます。主体的に生きるためには、この共感する力なしには成立しないということです。
ルールに従うことは悪いことではありません。しかし、ルールを守ることは正しいというだけでしかありません。わたしたちには、ルールそのものより、もっともっと大切にしなくてはならないものがあります。それが「共感する力」であり、さらに、それは「優しさ」という言葉に集約されるのかもしれません。他者への優しさが、自分のとるべき行動の判断軸になるのです。私はそれを大好きな人から教えてもらいました。本校を卒業するみなさんにも、同じ言葉を贈りたいと思います。「正しさ」よりも「優しさ」です。

最後になりますが、卒業生の保護者の皆様、3年間本校の教育活動に対し、ご理解と温かいご支援とご協力をいただき、誠にありがとうございました。心より御礼申し上げます。3年生の皆さんが本校の3年間で学び経験したことは、きっとこれからの未来において、背中を押してくれる力となっていきます。3年生の努力があったからこそ、今の御殿場西高校があります。そんな卒業生たちを3年間ご家庭で支えてくださり、誠にありがとうございました。

さあ、卒業生の皆さん。これで一旦のお別れとなります。卒業生のみなさんの限りない前途を祝し 輝く未来における、それぞれの活躍を心より祈念し、式辞といたします。

令和6年3月1日
御殿場西高等学校 校長 勝間田貴宏